「インターネット無料」や「追いだき機能」…人気物件の舞台裏

2020年11月13日
経済基盤が安定すると、人は心に余裕を持ち、豊かな人生を送れることを多くの大家を取材して強く感じたという。1万人の大家を取材してきた著者が、サラリーマンの定年後に毎月着実に家賃収入を得ることができる不動産で資産を増やす方法を伝授する。本連載は賃貸不動産オーナー向け経営情報誌「家主と地主」の編集長の永井ゆかり氏の著書『1万人の大家さんの結論!生涯現役で稼ぐ「サラリーマン家主」入門』(プレジデント社)から一部を抜粋、再編集した原稿です。
 
エリアマーケティングは地元不動産屋に聞け
 
物件のエリア・マーケティング3つのポイント
 
これまで賃貸不動産の購入までの心構えについて、「情報収集」「不動産の選び方」「不動産の現地確認」「収支計画」「融資」のテーマで紹介してきたが、ここからは購入後の賃貸住宅の経営について紹介する。
 
ここでは、入居者ニーズを取り入れた賃貸住宅を提供することが、空室リスク回避のカギを握ることを伝えたい。
 
家主業では、支出を抑えることも重要だが、最も大事なのは家賃収入を確保することだ。家主業の収入は家賃だからだ。家賃収入を最大化するためには、空室をつくらないことに注力しなくてはいけない。空室をつくらないためには、部屋を探している人に「この部屋に住みたい」と思わせることが重要だろう。つまり、入居者のニーズにマッチした部屋づくりが必要だ。
 
では、どうやって入居者ニーズを把握すればいいのか。最も重要なのは、自身が取得した賃貸住宅のエリアのマーケティングをすることだ。
 
マーケティングのポイントは3つある。
 
(1)どんな人が住んでいるエリアか
(2)どんな賃貸住宅が多いエリアか
(3)その入居対象者がそのエリアに住む理由は何か
 
この3点について探るためには、地元の不動産会社を回ることが有効だ。
 
例えば、大学があるエリアでは、(1)については学生が多く、(2)の賃貸住宅の種類は、学生向けのワンルームまたは1Kの賃貸住宅が多くなる。また(3)の学生がそのエリアに住む理由は、大学が近いからだといえる。大学があるエリアに不動産を購入する場合、単身者向けのアパートであれば、通常は学生向けに貸すということになるだろう。
 
しかし、それだけで即決してはいけない。不動産会社を回ってエリアの市場についてヒアリングするときは、学生以外にどんなニーズがあるかを必ず聞かなくてはいけない。当然のことながら、そのエリアには学生向けに賃貸しているライバルが多いからだ。あえてライバルの多い学生を入居者ターゲットとして運営するのか、あるいは、少数派ではあるが、学生以外のニーズを対象とするかを検討する必要がある。
 
「ターミナル駅でなくても、駅から近ければターミナル駅より家賃が安いので、社会人で部屋探しする人が増えている」などという情報が入れば、ライバルだらけの「レッドオーシャン」を狙うより、まだ潜在的なニーズとしてしか知られていない「ブルーオーシャン」である一人暮らしの社会人向けの需要に目を向ける方が、成功する確率は上がるのではないか。あるいは、単身者向けではなく、あえて二人暮らし向け、ファミリー向けの物件購入を検討するという選択肢もあり得る。単身者以外のニーズがどれだけあるのかを、不動産会社を回って聞くことも重要だ。
 
インターネット無料と追いだき機能が人気上位なワケ
 
例えば「意外に小学校の学区として人気が高いのに、ファミリー向け賃貸が少ない」という声を聞いたら、ファミリー向けにチャンスありだ。「需要に対して少ない=不足している」ということなので、ファミリー向け賃貸アパートやマンションがあれば狙い目だろうし、あるいは中古分譲マンションも、というように、選択肢はさらに増えるかもしれない。
 
いずれにしても、収益性が高い不動産の条件は、家賃競争にさらされないポジションにあること。入居者ニーズは、誰もが考えつくようなものだけでなく、意外性のあるニーズ、まさにダイヤモンドの原石のようなものを掘り当てることこそ重要だ。
 
人気設備は「インターネット無料」が4年連続1位
 
入居者のターゲットが明確になってきたら、そのターゲットのニーズに合う部屋を考える。入居者ニーズは大きく3つに分けられる。
 
(1)設備に対するニーズ
(2)建物の造り・間取りに対するニーズ
(3)管理に対するニーズ
 
まず(1)の設備に対するニーズについて説明しよう。
 
賃貸住宅業界向け専門新聞「週刊全国賃貸住宅新聞」で、毎年「入居者に人気の設備ランキング」という企画を実施している。この企画では、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まるTOP10」と「この設備が無ければ入居が決まらないTOP10」の2つのランキングを掲載している。
 
このランキングは、全国の賃貸住宅管理会社の協力を得て、それぞれについて、単身者向けと2人以上住めるファミリー向けとに分けて回答してもらった結果をまとめたものだ。パッと見ただけでも、単身者向けとファミリー向けのニーズの優先順位の違いがわかるだろう。購入したアパートの空室をリフォームする際に、どんな設備を新しく入れるかを検討するときには、単身者向けなのか、ファミリー向けなのかで設備のニーズが異なることを押さえておきたい。
 
このランキング企画は、2005年からほぼ毎年実施していて、私は第1回から編集部の一員として関わっている。第1回からランキングを見ていてわかったことは、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まるTOP10」に入っている設備が、2、3年後には「この設備が無ければ入居が決まらないTOP10」に入っていることだ。つまり、年々設備に対するニーズは、レベルが上がっていることになる。
 
例えば、単身者向けの「独立洗面台」や「宅配ボックス」は、数年前までは「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」のランキングのみに入っていたが、現在は当然ながら両方に入っている。
 
もちろん、長期間TOP3に入っている設備もある。単身者向けでは「インターネット無料」、ファミリー向けでは「追いだき機能」だ。この2つの設備に共通するのは、家計に優しいということだろう。
 
エリアの入居者ニーズをどう掴めばいいのか
 
インターネット無料についていえば、今や賃貸入居者の主要ターゲットである若者にとって、水道、ガス、電気に次いで重要なインフラで、個人で契約するとなると、通常4000~5000円ほど必要だ。そのため、インターネット無料となれば、家賃が周辺相場よりも1000円、2000円高くても、個人で契約するより「お得」になる。では、なぜ家主はインターネットを無料で提供できるのか。当然、インターネット使用料は家主が負担している。ただし、家主向けのインターネット料金は個人の料金とは異なる。集合住宅でまとめてその戸数分を契約するため、1戸で契約する個人よりも安く契約できるのだ。
 
契約戸数やプロバイダー会社にもよるが、目安としては月額1戸あたり1000円前後、別途工事費などの初期費用がかかる。初期費用は設備投資費と考えるが、月額使用料は家賃が1500円以上高くできるのであれば、入居者にインターネット使用料無料としても、十分まかなうことができる。入居者がいる部屋では、立ち会い確認などに手間がかかり、なかなか工事が進まないこともあるが、家主にとっても、入居者にとってもメリットがあるサービスであり、インターネット無料物件の付加価値は高い。
 
追いだき機能がファミリー向け物件に人気なのは、やはり生活時間のタイムラグにある。働き盛りの父親が帰ってくる時間が遅いと、子供たちが入浴する時間と間が空いてしまう。熱いお湯を足すことなく、お風呂を温めることができる。
 
また、二人暮らしや子供が1人のファミリーの場合、2日間お湯を入れ替えずに入るケースもある。そのときにも追いだき機能は役に立つ。ガス代はかかるが、水道代の節約という点でメリットが大きい。
 
ただ、新聞で掲載しているこのランキングは、すべてのエリアに通じるものではない。全国各地からニーズを集めて一つのランキングにしているからだ。ランキングの順位は、エリアによっては異なるものもあるだろう。所変われば住まいに対する入居者のニーズも変わる。当然、設備についても変わるものだ。しかし、このランキングが役に立たないわけではない。
 
賢い家主は、何の準備もせずに「このエリアでは、どんな設備があると入居者が決まりやすいのか」などという質問はしない。このランキングを片手に不動産会社を訪問し、「このエリアではどれが上位になるのか」と聞く。不動産会社の担当者も、たたき台となる「週刊全国賃貸住宅新聞」のランキングがあるからこそ、「このエリアは、単身者ならこっちの設備の方がニーズが高いので2位ですね」などと的確なアドバイスができるだろう。
 
良い情報を集めるためには、自ら情報を発信することが重要だ。そのためのツールとしてもこのランキングの利用価値は高い。
 
永井ゆかり
「家主と地主」編集長
 
https://news.yahoo.co.jp/articles/e32d06e62ea7c739e47a91afcce888dd4196ee42?page=1