「地方の古い戸建て」買い取る企業の儲けの秘訣

2019年11月15日

空き家の問題は、今後ますます深刻化するといわれている。こちらの記事『100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処』で、空き家が問題になる理由や対処の取り組みについて取り上げた。

 空き家の増加は、進行する高齢化の問題や人口や世帯の減少といった問題だけでなく、住宅価格の市場性の問題もある。地方の老朽化した住宅の場合、売りたくても貸したくても採算が合わないといった理由で、住宅市場に出せない空き家が増えているからだ。

■古い家を買い取るカチタス

 ところが、こうした古い家を買い取る企業がある。埋もれてしまう家に“価値を足す”リフォームをして、住宅市場で売り出す「カチタス」(群馬県桐生市)だ。

 近年「買い取り再販事業」が広がりつつある。買い取り再販とは、事業者が古い住宅を買い取って、リフォームしたうえで、自社が売り主となって販売する事業だ。

 「古い住宅」は、今のものより性能が低いことに加え、老朽化が進み見栄えも悪いので、改修をしないと住宅市場に出しづらい。改修にいくらかかるかわからないし、時間も手間もかかるので、一般消費者にはハードルが高い。

 事業者であれば、一般消費者と違い、大量発注することでリフォームコストを抑えることができ、改修内容をパターン化することで工期も短くできる。住宅の性能を今のレベルに向上させ、今の生活に適した間取りや設備に改修すれば、買いたいという人が現れる。こうした買い取り再販事業者が、近年増えているのだ。

■取り扱う物件はマンションが多い

 ところが、買い取り再販事業者が取り扱う住宅の多くは、都市部のマンションだ。

 なぜなら、マンションは、年代別に構造や設備に類似性があり、経験豊富な事業者であれば、物件をしっかり見れば、あらかじめ改修箇所や費用などを予測することができる。しかも、マンションは都市部に多いので、買い手となる一定の需要層も見込める。

これに対して戸建ては、建てたのが大手ハウスメーカーか地元の小規模工務店かによって、構造や間取り、設備などに大きな違いがある。さらに改修が必要な範囲が、マンションのように住宅内にとどまらず、住宅の基礎や屋根、外構も対象になり、それぞれの状態もさまざまで、改修範囲の特定や費用の予測が難しくなる。

 例えば、想定した以上に構造部分が腐食していたりすると、改修費用がかさみ、その額を上乗せしたら市場で売れない販売価格に上昇するので、結果的に赤字になるという場合も少なくない。こうしたリスクを避けるために、築年数の新しい戸建てに限定したり、そもそもマンションしか扱わないといった、買い取り再販事業者が多いのが実態だ。

 

 ましてや、購入需要の小さい「地方」では、なおさらリスクの大きい戸建ての買い取り再販事業は展開できないという構図になる。

 そんな中、通常なら手を出さない「地方」×「古い戸建て」の買い取り再販事業で急成長しているのが、「カチタス」だ。2018年3月期に売上高692億円、営業利益73億円だったが、2019年3月期には売上高813億円、営業利益91億円に成長。なぜビジネスとして成功しているのか、代表取締役の新井健資氏に聞いた。

 

 カチタスの成功の理由は、立ち上げ当初のビジネスモデルにあった。実は、カチタスの当初の事業は、「競売物件」の買い取り再販事業だった。

 競売物件とは、ローンの返済ができなくなった不動産を裁判所が差し押さえ、競売にかけて最高値を付けた人に売却して、ローンの返済に充てるもの。もし市場価値の高い不動産なら、住宅市場で売却したほうが、競売より高く売れる可能性が高い。したがって、競売物件には、市場価値の低い(住宅市場では安くしか売れない)、地方の空き家などが多くなる。

 

 カチタスは、こうした市場価値の低い競売物件を買い取って、再生して販売することを繰り返し行うことで、独自のノウハウを構築し、ビジネスとして全国展開できるようになったという。

 カチタスの店舗展開は、都市部に店舗を増やしていく多くの不動産会社とはかなり異なる。競売物件が対象なので、地方裁判所の近くに店舗展開をしていった。同社の店舗一覧を見ると、大都市はごくわずかで地方都市の店舗がずらりと並ぶ。

 競売物件で構築したカチタスのノウハウは、そのまま「地方」×「古い戸建て」の再生ビジネスにつながっていく。地方の古い空き家は増え続けているので、ビジネスチャンスも拡大するうえ、もともと地方に店舗展開していたので、独自の情報収集や販売経路などが構築されているという環境にあったわけだ。

 

■「地方」でも手頃な価格にすれば買い手はいる

 とはいえ、2つの大きなハードルがある。

 (1)買い取り再販する住宅が、人口流出の進む地方で売れるのか

 (2)いかに精度高く改修費用を予測(=買い取る住宅の目利き)できるか

 この疑問を新井氏にぶつけてみた。まず、「地方で家が売れるかどうか」については「買う人はいる」と新井氏は言い切る。

 同社のビジネスモデルで、購入者としてターゲットしているのは下表のような層だ。地方都市で、初めて家を購入する層に対して、住宅市場では売りづらい家を買い取り再生し、手頃な価格で売り出す、というシンプルなものだ。

 

 カチタスによると、地方の総世帯数は日本全国の約46%(約2419万世帯)。そのうち、年収200万~500万円の世帯は、地方の総世帯の約37%(約902万世帯)で、さらに借家に住んでいる割合は約37%(約333万世帯)。借家のままでいいという人もいるが、持ち家志向が4割程度あるので、約138万世帯は、地方で手頃な価格の戸建てがあれば購入する「潜在顧客層」になるという。

 潜在顧客を顕在化させるには、住宅の改修も重要だが、「買える価格に設定」して販売することも重要だ。カチタスでは、つねに販売価格を意識しているという。

 

■三者立ち会いを実施

 買い取るかどうかの基準は、改修費用を上乗せしても「住宅市場で売れる販売価格に収まる」かどうか。となると、改修範囲や費用をどれだけ正確に予測し、買い取り価格を決めるかが、鍵になる。同社は競売物件だった古い戸建ての改修を多く扱うことで、目利きのスキルを上げてきたが、これだけに頼っているわけではない。

 買い取り再販業者の多くは、買い取り物件の目利きを自社の担当者に任せている。これに対して、カチタスでは「三者立会い」を実施している。

 

 三者とは、不動産会社である同社の担当者に加え、改修工事を行う施工会社、シロアリの防蟻工事を行う防蟻会社の3社だ。不動産会社は物件情報を整理し、法的な手続きを行うサポートをするが、建築の専門家ではない。実際に改修工事を行う施工会社と防蟻会社が床下や屋根裏まで入念に確認し、目利きを行うことで精度が上がるのだという。

 「雨漏りリスクのない古い戸建てはない」と言っていいほどだというが、雨漏りがあっても原因が特定できて改修の見通しが立つ場合は、改修費用を予測でき、売り出し後のトラブルを避けることができる。原因が特定できない場合は、売り出し後に雨漏りが生じる可能性が高いので、買い取り対象外と判断される。

 

実はここまでしても、実際に買い取った家の改修範囲が想定よりも広がってしまう事例もあるという。そうした事例を検討して、つねに「チェックリスト」を改善して、目利きのスキルを高めることを繰り返して、レベルアップに努めているのだ。

 また、住宅市場で手頃な価格に設定するには、「家賃並みの住宅ローンで買える」ことを意識しているという。同社の平均販売価格は1430万円なので、改修費用を安く抑える工夫をしないと事業化が難しい。

 

 現在の同社のビジネスモデルを図式化したのが、下図だ。現在は、地方の事業を「カチタス」が担い、都市部の事業を「リプライス」が担う、地域分けをしている。それぞれ地元のネットワークを構築する一方、買い取った家の再生化を行っている。

 改修費用は大きく分けると交換する設備機器や建材の費用と工務店への手間賃に分かれる。資材関係は資材メーカーに大量発注することで、工務店への手間賃は安定した工事の発注をすることで抑制している。

 

 加えて、改修範囲を決める際に、使えるものはできるだけ残して使うようにしている。とはいえ、買い手のニーズを考慮して、外構でいえば駐車場の整備を行い、内装ではキッチンやバスなどの水回りやドアノブなど使用感が出るものは交換することが多いという。

■地方の空き家すべてを救えるわけではない

 地方で急増する空き家の要因に、住宅市場では価値が低いことが挙げられる。が、カチタスの買い取り再販によって、価値が低い家も住宅市場に出すことができる。

 

 もちろん、提示した買い取り価格では納得できないという場合もある。住宅市場で価値が低くとも、住んでいる人にとっては価値の大きいわが家だ。もっと高く売れるはずと、商談が成立しない事例もあるが、多くの場合は後から商談が復活するという。仲介会社を通じて住宅市場で売ってみると、なかなか売れないという実態がわかり、希望より低い額でも買い取りに応じることになるのだと。

 ただし、すべての買い取り案件で買い取れるわけではない。人口減少が激しいなどその地域に住宅需要がなかったり、老朽化が進んでいて改修費用が高額になったりで、相談を受けたものの買い取れないということも多い。感覚値だがという前置きではあるが、10件に3件程度を買い取るイメージだという。残念ながら、家に価値を足すことで住宅市場に流通できる家には、限りがあるのだ。

 

 結局、多くの地方の空き家やその予備軍は、買い取り再販事業では救えないことになるが、所有者が適切にメンテナンスをしていれば、改修費用を抑えることができて買い取り再販が可能になることもあるだろう。

 日本の住宅は、新築時に多くのこだわりを持って建てるのに、所有後はあまりメンテナンスされないことで、老朽化が進んでしまう。日頃からしっかりメンテナンスをすることが、空き家の解消につながるのかもしれない。

 

山本 久美子 :住宅ジャーナリスト

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191114-00311922-toyo-soci&p=1