マンションの「意外な真実」…じつは“建て替え間近”が「お買い得」といえるワケ

2021年3月5日
マンションの寿命については諸説あり、一説には40年とも100年と言われています。マンションも人間と同様に寿命がくれば建て替えが必ず必要となるもの。建て替えとなれば発生する費用は一体誰が負担するの…? と不安要素が先行するところですが、実は建て替え前のマンションを購入することで「得」をすることもあるのです。株式会社Housmart代表取締役の針山昌幸氏が解説します。
 
そもそもなぜ建て替えが必要なのか?
 
そもそもなぜマンションの建て替えは必要なのでしょうか。
 
1.耐震性の向上
建て替えをする理由は大きく2つ。1つ目は、耐震性の向上です。
地震が多い日本においては、大きな地震が発生する度に建築基準法が改正され、耐震基準が厳しくなってきました。行政側では地震被害を減らすため、旧耐震の建物に対して耐震補強や建て替えを促しています。
 
2.マンションの形態が現在のニーズに合わない
2つ目は、マンションの形態が現在のニーズに合わなくなってきていること。
「5階建ての団地でエレベーターが無い」「ダイニングのみでリビングが無い」「エアコンが設置できない」など、今の新築マンションでは当たり前に備えられている設備がないという理由で住みづらいことから、空室住戸が増加してしまう原因となっています。
 
つまりマンションの建て替えは、安全面の確保や住みやすさを改善するだけでなく、空室を減らしきちんとマンションが運営されるために実施されるものなのです。
 
建て替えの費用は誰が払うもの?
 
居住者が快適に住み続けるために必要となる建て替えですが、その費用は当然大きなものとなります。建て替えが決まった場合、その費用は住民が負担する必要があります。
 
「だったら、建て替えが必要となるマンションに住んだら損じゃないか…!」
 
となるところですが、実はその逆となる場合があります。それが、建て替えを行ったことで「マンションが大きくなる」ケースです。
 
マンションや一戸建てが建てられている土地には建ぺい率、容積率というものが定められています。全ての建物はその基準に従って大きさが決定し、建設されます。この基準が時代とともに緩和されているケースがあるのです。
 
特に基準が緩和されている土地が多いのは、土地を有効活用したい都心部です。たとえば青山や白金にはかつて低層マンションしか建てられなかったのが、その後の土地計画の変更により現在では大型のマンションが並ぶ土地になっています。
 
以前に建てられた低層マンションを取り壊してその土地に高層マンションを建てれば、マンション全体の床面積は数倍になり、その住戸数も大きく増やすことができます。
 
例えば全50戸のマンションを取り壊しそこに全200戸の高層マンションに建て替える。このとき、新しくできた150戸を一般に販売し、建て替え費用に充てることで、以前からそのマンションに住んでいる住人は建て替えの費用を負担することなく新築マンションに住むことができる、というわけです。
 
新築マンションで販売されない部屋がある理由
 
新築マンションのモデルルームを見学に行った事がある方の中には、分譲されているマンションの中に「販売されない部屋」があるのを見た方もいらっしゃると思います。いわゆる非分譲住戸です。
 
その持ち主こそが「もともとそこに家を持っていた方」。言い方を変えれば、自分たちが住んでいたマンションを不動産会社に提供することで、建て替え費用なしで最新のマンションの部屋を手に入れることに成功した、ともいえます。
 
例えば新宿西口にある新宿アイランドタワービル。
 
敷地内に新宿アイランドレジデンスと言う名前の低層マンションが隣接していますが(新宿駅からアイランドタワーに入るときに右手に見えるマンションです)、実はあのマンションの一部はアイランドタワーを建てた土地の元々の所有者が住んでいます。アイランドタワーを建てるために所有していた土地を提供し、新しく建てられたマンションに今は住んでいるわけです。
 
このように、マンションの建て替えは既存マンションの管理組合がディベロッパーと協力して行うのが一般的です。
 
実際、都内で建て替えが行われたマンションはほとんどがこの形での建て替え。マンションの管理組合には、そうした不動産デベロッパーからの建て替えセミナーのご招待などの郵便がときどき送られてきています。
 
マンションの管理組合で「古くなったからマンションを建て替えます。一人あたり3000万円の負担になります」と言われて「わかりました」と即答する住民は、まずいません。
 
古いマンションを建て替えようとする場合、先に説明した「住民には負担がない形で建て替えを行う」方法以外では費用負担が大きすぎるため、現実的には非常に難しいのです。
 
駅近、建物の高さ、管理組合に注目
では、遠くない将来に建て替えが見込めるマンションとは、どういった条件を持つものでしょうか? 
■人気エリアの駅近である
 
まず、これが極めて重要。マンションの資産価値は立地で決まります。恵比寿や目黒と言った人気エリアであれば、建て替えた後の販売も見込めるため、マンションディベロッパーも建て替えの話に積極的になります。
 
■周囲と比較して圧倒的に低い
 
そして、周りの建物と比べて極端に階数が低い物件です。周りの建物は10階15階建てなのにそのマンションだけ4階建て、というようなケースがこれに該当します。4階建てのマンションを12階建てにすれば部屋数は3倍になり、元の住人に住戸を負担しても利益がでる、というわけです。
 
■管理組合がきちんと機能している
 
また、管理組合がしっかりしていることも重要です。マンションの建て替えを実際に決定するのは、そのマンションの管理組合です。その管理組合が機能していないようなマンションでは、マンション建て替えの決をとることすらできず、計画自体が行えない可能性があるからです。
 
もしも建て替え前のマンションを「後々建て替えられること」を期待して購入する場合、ぜひ気をつけていただきたいことがあります。
 
これらの条件を無事にクリアしても、建て替えは確約できない、非常にラッキーなケースである、ということです。
 
超えるべきハードルと考慮すべき点としては、
 
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・容積率に余裕がある
・住民の合意形成が得られる
・駅近の好立地である
・建て替えが行われるまで古い建物に住み続ける必要がある
・建て替えまでにリノベーションを行う場合はその費用を考慮する
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「建て替えが決まればラッキー」くらいに考える
マンションの建て替えを実施しようとする場合、組合員及び議決権の総数の5分の4の賛成が必要です。また、近隣住人や用途地域など土地がもつ諸条件によってそもそも高層の建物が建てられない可能性も。外から見た要素だけで「将来的な建て替えの実施」の確率を予測し、期待するのは賭けともいえます。
 
実際に建て替えが実現された場合、買い手がつきやすい都心の一等地であっても数千万円の建て替え費用を払うことになるのが通常である、と思っていた方が安全でしょう。
 
実際に建て替えが実施される件数は、ごくわずか。平成31年4月に国土交通省から発表された「マンション建替えの実施状況」によると、建て替え実施中のマンションは23棟。マンション管理業協会の発表によれば、協会が把握している範囲でのマンション棟数は全国で116,830棟。
 
もちろん、建て替えが必要でないマンションも含みますが、その数がいかに少数派であるかはお分かりいただけるでしょう。
 
ギャンブル要素が強いのは否めませんが、「好立地で街としてもブランド力があり、築年数が建っているから価格は底値、古さはリノベーションすればOK。費用負担なしに建て替えが決まればラッキー」と割り切れれば、そうした大逆転劇に賭けてみるのも選択肢としてはアリかもしれません。
 
ただし、現状としては宝くじと同じくらいの確率でもある、と認識しておくのが懸命でしょう。
 
参考:マンション建替えの実施状況(国土交通省)
参考:令和1年マンション管理受託動向調査結果概要
 
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記事提供:「マンションジャーナル」(株式会社Housmart運営)
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針山 昌幸(株式会社Housmart代表取締役社長)
 
https://news.yahoo.co.jp/articles/622b30c1f04fd0853837d9c27a05d371b6f762c9?page=1