メディアが報じる「不動産バブル崩壊」という嘘

2017年9月21日

2015年後半あたりからささやかれている「不動産バブル崩壊説」だが、そんなものは大嘘だ。

こうした崩壊・暴落説でなぜか常にやり玉に上がるのは、都心湾岸地区のタワーマンション群である。確かに中国人を中心とした外国人のいわゆる「爆買い」は終わり、一部では売りも出ている。しかし結論を言えば現在の国内不動産市場は、北朝鮮有事や世界的な金融危機でも起こらないまったくバブルではないし、したがってバブル崩壊も、ない。

2012年12月に民主党から自民党へ政権交代し、アベノミクス、黒田バズーカによって、長らく低迷していた株価が大きく息を吹き返したのと軌を一にするように、国内不動産市場も大幅に回復した。

不動産経済研究所によれば、確かに首都圏の新築マンションは2015年後半から契約動向が鈍くなり始め、2016年に入ってから一段と低迷、契約率は市場の好不調を占う分岐点とされる70パーセントを恒常的に割り込んだうえ、発売戸数も3万5772戸とリーマン・ショック後の2009年以来の低水準にとどまった。

しかし、不振の理由は明白で、「価格が高くなりすぎた」からだ。アベノミクスによる地価高騰に加え、人件費や資材価格高騰による建設コストの上昇で、2012年に首都圏平均4540万円だった平均価格は2016年には5490万円と20パーセント以上も高騰。低金利が住宅ローン利用者の購買力を上げ、借り入れを通じて事業を行うデベロッパーにも恩恵をもたらしたといった側面もある。

東京カンテイによれば、新築マンション価格(70平方メートル換算)を平均年収で除した年収倍率は2012年の8.7倍から10.68倍へと跳ね上がった。

しかしそれ以降の動向を冷静に眺めるとどうだろう。首都圏新築マンションは2017年に入ると5000万円台後半へと、一段と上昇し、契約率も70パーセント前後へと回復している。

なぜこのようなことになっているのか。理由は大きく2つある。ひとつは首都圏新築マンション市場の「大手寡占」が進んだことだ。マンションは立地厳選・タワー化・大型化が進んだことで事業規模が大きくなり、中小規模のデベロッパーには手を出しにくいことが理由といえる。

また中小デベロッパーがリーマン・ショックの反省から、地方都市の県庁所在地などに戦場を移す、中古マンション再生や仲介、介護事業などに事業ポートフォリオを多角分散させるなどしており、以前に比してかなり慎重な経営姿勢を見せている点もあげられる。

そもそも「バブル」の定義が曖昧

発売戸数が少ないのは、市場動向を伺いつつ、事業ポートフォリオの一部にすぎない新築マンションについて、体力のある大手が供給調整を行っている、というのが実態だ。こうした弾力性のある市場では、北朝鮮有事や世界的な経済・金融危機、大規模な災害や極端な金利上昇でも起きない限り、大きく崩れることはないだろうし、このような事態が発生した場合には、なにも都心湾岸タワーマンションだけが影響を受ける話でもない。

そもそも「バブル」という言葉の定義が曖昧なまま、様々な情報が流布されていることも問題だ。一部メディアなどでは「湾岸タワーマンションは現行の坪300万円台から100万円台に下落する」といった情報を垂れ流しているが、そこには根拠が皆無である。

不動産市場でいうバブルとは「理論価格を遥かに超えたところで取引が行われている状態」を指すが、不動産価格の裏付けは「賃料」である。300万円台から100万円台へと3分の1程度に落ちるためには、投資家が求める期待利回りが現在と同水準と仮定した場合、賃料も3分の1に下がる必要があるが、資産価格より数段硬直性のある賃料が3分の1に下がる可能性はほぼゼロであると考えられ、100万円台になる可能性も、ない。

新築も中古も都心不動産市場は、価格調整が行われている局面であり、到底バブルとはいえないし、したがって大きく崩壊することもできない。一部メディアが煽るようなイメージより、都心不動産市場はもっと落ち着いている。

長嶋 修

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170921-00017758-forbes-bus_all&p=2