京都の人は閉鎖的?優良な「町家」物件取得のための交渉術

2019年9月6日

本記事では、伝統的な京町家を宿泊施設して保存・再生する事業を数多く手がけてきた児玉舟氏の著書、『最強の京都「町家」投資』から一部を抜粋し、投資先としての京都「町家」の魅力と具体的な運営方法について解説します。今回は、京町家を実際に「宿泊施設」として稼働させるための手順等について見ていきます。

物件の情報収集には、地元住民との密な付き合いが重要

実際に京都の町家をリノベーションして宿泊施設として稼働させるには、どのような手順が必要なのでしょうか? ここではビジネスモデルを例に説明します。

手順は、大きく二つに分けることができます。物件を取得して、緻密に企画を練り、宿泊施設としての環境を整えプロデュースする段階と、オープン準備や受付業務、客室管理などの運営段階です。

(1)物件の取得

事業を開始するには、まず宿泊施設に改装できる町家を取得しなければなりません。「不動産業は情報産業」といわれるとおり、立地の良い物件が売りに出されると、あっという間に情報が広まり、さまざまな事業者が我先にと集まります。そうなると適正価格での取得が難しいので、彼らに先んじて優良物件を買い入れるためには行政や地元不動産会社との連携に加え、街中を回り「脚を使う営業」も重要です。

主なターゲットは空き家になっている町家ですが、所有者が分からなかったり、老朽化が進んでいたりするケースも少なくありません。そこで、現在使用されている物件にも訪問して住人に声をかけ、譲っていただけるよう“買取の提案”をするのです。愛着のある住まいにいきなり「売却を」と申し出ると、驚かれることもありますが、取り壊すのではなく、家族の歴史を刻んできた建物を後世に残るよう改装し、活用するつもりだと伝えると、多くの人が共感し、理解を示してくれます。

物件の取得においては情報収集も大切であり、普段から地元の人たちと密にお付き合いをし、良好な関係を築いておく努力が欠かせません。京都の人は閉鎖的だとしばしば言われます。確かに、すぐに胸襟を開いて語り合うという人は少なく、表向きははんなり穏やかでも、信頼するまで本音を語ってくれない人も多くいます。そのような地元の気質はかなり高い参入障壁となるでしょう。けれども、時間をかけて信頼関係を築くことができれば、その関係は長く維持できる方たちです。

物件の情報を得たら、地域の市場等を調査します。エリアを訪れる観光客数はもちろん、彼らの目的や地域・国籍、経済力などを詳細に分析し、それを基にコンセプトを作るのです。取得を検討している土地についても、交通の便や周辺の観光スポットなど、観光客の需要に影響する事柄については特に入念に調査します。

 

宿泊施設として高い稼働率を維持するための施策とは?

(2)企画・建築

宿泊施設として高い稼働率を維持するためは、物件の魅力が非常に重要です。主なターゲットである外国人観光客から支持されるよう、私の会社では建物の細部にいたるまで、意匠に工夫を凝らした設計を提案しています。

町家の多くは、築後100年近い年数を経ており、状態やデザイン、使われている部材なども多様です。あまり手入れがされていないものや、空き家になってから年数が経ったものは劣化が進んでいることもあります。あるいは、もともとの間取りや使われていた部材に共通性があっても、住み手によってさまざまな改装を施され、ほとんど原型をとどめていないものもあります。

私の会社では、一つひとつの町家について、事前に行った市場調査に基づいて、立地やターゲット、周辺環境、競合施設等に合わせたリノベーションプランを構築し、投資家に提供しています。

企画の骨子が固まったら、リノベーション工事に取りかかります。ただし、長く経営を維持するには、事前準備として地域や行政との折衝が欠かせません。近隣から応援してもらえるよう説明会を開催し、事業の内容や民泊との違い、例えば緻密な管理やオペレーションについて説明を重ね、開業への合意を形成していきます。

行政への対応では各種申請手続きが必要です。主なものとして、消防法と旅館業法に基づく申請があります。

また、京都らしさを求める宿泊客の満足度を得るには、インテリアコーディネートも重要です。物件ごとにプランを作成するなかで、部屋のテーマを決め、それに合う家具や備品、装飾品を手配します。

(3)オープン準備

建物が完成したら、いよいよオープンの準備に取りかかります。なかでも大切な準備の一つに、宿泊予約サイトへの登録があります。近年はインターネット経由の予約が大きな割合を占めており、特に海外からの予約は、ほとんどがインターネットからです。そのため、開業前に、ネット上で集客できるシステムを整備しておく必要があります。

物件を知らない外国人に、魅力を伝えるうえで大きなカギとなるのが写真です。町家であることを示す外観に加え、リビングや寝室、バスルーム、洗面所など、旅行者が期待すると思われる写真を数多く撮影します。物件からの景観や立地に魅力がある場合には、宿泊する楽しみをよりイメージしやすいよう、モデルを使った撮影も良いでしょう。

(4)客室管理

民泊と差別化するうえで、行き届いた客室管理は非常に重要です。詳しくは次回以降解説しますが、ホテルとは異なり、一軒一軒が離れた場所にあるので、対応には手間と時間がかかります。最初から集約的に物件を取得して展開するドミナント出店を意識することで、効率的な客室管理を実現できます。

 

児玉 舟

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190906-00022995-gonline-bus_all&p=1