大手と中堅の「マンションの品質」に差がなくなりつつある理由

2021年3月12日
大手のほうがマンションの質は良い……そう思っている方は多いはず。しかし、近年は建物自体に大きな差がないだけでなく、その後の保証面でも大手、中堅などの差はなくなりつつあります。本記事では、その理由を見ていきましょう。
 
様々な基準の下に建てられているマンション
 
マンションはさまざまな法律によって基準が定められています。どのデベロッパーでも、都道府県知事や国土交通大臣に任命、指定された建築主事や指定確認検査機関に建築確認を申請する必要があり、建築基準法などさまざまな基準を満たした建物でなければ作れません。
 
その結果、わずかに床スラブ厚が変わるといった微細な差や工法による違いはあるとしても、当然のことながらどのマンションも国が定める基準を十分にクリアしていますから、マンションの躯体(建築物の構造体のこと。建物そのものを支える基礎・杭・柱・梁・床などのことで、内装の仕上げ、設備機器類以外を指します)は、どこの会社でも大差ないと言っても問題ない状況となっています。
 
今はどこの会社の物件でも「公的な保証」がある
 
建物自体に差がないだけでなく、その後の保証にも大手、中堅などの差はなくなりつつあります。
 
2000年の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の施行により、購入者は住宅の構造耐力上主要な部分および、雨水の浸入を防止する部分について10年間は無料で補修してもらうことができるようになりました。
 
また、2005年の構造計算書偽装問題を受けて建築確認・検査が厳格化されています。さらに2009年の「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」の施行で、すべての新築住宅供給者(デベロッパー)は、住宅瑕疵担保責任保険に加入することが義務付けられました(保険の他、保証金を法務局に供託することも可能)。
 
これにより、万一、事業者が倒産した場合でも国土交通大臣指定の保険法人に瑕疵の補修等にかかる費用等(保険金)を直接請求することができます。つまり、今はどこの会社の物件でも、公的な保証があると言えるのです。
 
ちなみに、この保険に加入または供託していないと、新築住宅は供給できないことになっており、この制度のおかげで、建物の安心度は高められているわけです。
 
また、マンション独自の維持修繕に関する長期修繕計画も、今どき、設定しない事業者はないと言っても過言ではありません。これは購入するマンションの資産価値の維持に大きな影響があるので、計画案だけでも購入前の早い時期に見せてもらうようにしたいところです。
 
このように、マンションはさまざまな法律などによって規制を受けて建てられています。その結果、現在ではよほどのことがない限り、品質には大きな差はないようになっているということを、まずは理解しておきましょう。
 
同じ広さのマンションにも関わらず価格には大きな差
 
マンションの躯体や品質にはさほど差がなく、保証も変わらないにもかかわらず、大手の有名な会社が作るマンションとそれ以外の会社が作るマンションの間には大きな価格差があります。
 
マンションの市場調査会社トータルブレインが2007年に発表した調査によると、同年1~6月に不動産会社大手12社が東京23区内で販売した分譲マンション価格(3.3㎡あたり)は、中堅・中小の不動産会社の分譲価格よりも25%高かったという結果が出ています。
 
調査対象は東京23区内で販売された分譲マンション5686戸で、このうち、約37%を大手12社の物件が占め、販売価格はそれ以外の会社と比べて、3.3㎡あたり74万3500円高い297万4000円でした。
 
ちなみに、これを70㎡のマンション価格にしてみると、大手の物件であれば約6300万円。25%安い他の会社の物件では、約4730万円になり、同じ広さのマンションであるにもかかわらず、その差は1500万円以上にもなります。これを住宅ローンに換算してみると、35年返済、金利3%として、毎月約6万円の差です。
 
この大きな価格差の要因は、大手企業の場合、資本力を背景に価格が高く評価されがちな大規模物件や超高層物件を扱うことが多いためと考えられますが、同様の立地条件で中規模物件を比較しても、10%前後の価格差は現在でもあるように思います。
 
ブランド物のバッグなら、ちょっと高かったかも……と思っても、数万円程度の価格差ですし、それなりのステイタス感もありますから、多少の使い勝手の悪さは我慢できるかも知れません。
 
しかし、選んだマンションのブランドイメージがよいからと言って、住んでからわかってくる使い勝手の悪さや居住性の悪さは、我慢できるようなレベルの話ではありません。
 
周辺のマンションと比較し、価格差を十分調査する
 
そう考えると、このような価格差があることをマンション購入検討者は見過ごしてはなりません。チラシや住宅情報誌などでは入手できる情報に限りがありますので、必ずインターネットで同駅および周辺エリアのマンションを検索し、その価格差を十分に調査するよう心がけてください。
 
つまり、買う側には、ブランドイメージに踊らされない冷静な判断力と賢い選択が必要なのです。
 
住み心地に関する知識や関心の薄い「営業マン」に注意
 
ブランドイメージに左右されない選び方をご理解いただいた次は、マンションの説明を受ける時に接する営業マンについて見ていくことにしましょう。
 
実際のモデルルームへ行くと、自分が売っている住まいという商品には欠かせない、住み心地に関しての知識や関心の薄い営業マンが多く存在するということに驚かされます。決して、「この営業マン、年齢も若いし、こんなもんだろう」などと見過ごしてはいけません。
 
その営業マンの資質を見極めることが、その会社の商品思想を見極めることにつながります。つまり、これは納得できるマンションを購入する第一歩なのです。
 
営業マンの説明に納得できない背景には販売代理、共同事業という事業の枠組みによる問題もあるようです。
 
知らないモノでも売る?「販売代理」というシステム
 
まずは販売代理というしくみについて解説します。これは言葉が示す通り、マンションを作る会社(事業主)とは別に売る会社が存在するということです。
 
その理由は2つあります。ひとつは、販売にあたって、作る会社に販売人員がいないという場合です。これには、販売目論みの違いにより、単に人員不足になるケースと、人件費を切り詰めるためのケースに分かれます。
 
中にはそもそも、営業マンを抱えていない会社もあります。そうした場合には、販売代理会社に所属する「そのマンションだけの雇われ営業マン」が売ることになるのです。
 
しかし、そういう人たちはマンション販売にかけてはプロですが、所詮は依頼された商品を販売するだけの人です。ですから、パンフレットに書かれていることについては、立て板に水といった調子で詳しく説明してくれますが、事業主の説明や商品思想となると、とたんに答えに窮してしまう人がほとんどでしょう。
 
一部には特定の会社の物件を販売するための専門会社がありますが、そういう会社を除けば、販売会社の目的は販売し、販売代理手数料を受け取るだけ。
 
作る会社、売る会社が同一、あるいはそれに近い状況であれば、売る人も買った人への責任を感じるはずですが、作る、売るが分かれている場合には、立場上どうしてもその意識が薄くなります。つまり、パンフレットに書かれている以上のことを説明できる背景がないのです。
 
また、販売代理会社に任せるもうひとつの経緯に、持ち込み案件というケースがあります。マンション事業は、土地を探して地主と交渉して購入、全体をプランニングして設計、施工業者を選び……と非常に時間と手間のかかる仕事です。
 
土地を買うためには、何百件もの情報を見ますし、そのうちで買える土地となるのはひとつか、2つ。よい土地だと思っても、地主さんがやっぱり売りたくないということもあり、マンション事業が始まるまでには長い時間がかかるのです。
 
そこで、一から全部やって事業化するのは大変でしょうと、土地と建物案を事業として他社に持ち込み、施工や販売もウチでやりますから、事業主として資金だけ出してくださいという仕事をする会社が出てきます。
 
この方法であれば、土地はもちろん、設計プランも決まっており、ついでに販売もしてくれるわけですから、手間はかからず、事業主は事業資金の調達と回収だけに専念できます。つまり、言葉を選ばずに言えば、ラクして儲かる事業手法というわけです。そこで、今期は売り上げが少ないなあ……という時に、採用されるのです。
 
この場合、その事業主は本当の意味で自分が作ったものを売っているとは言えません。その事業主も本来はデベロッパー、即ち商品企画者です。しかし、この形態では、その事業主独自の商品思想は押しやられ、その持ち込み業者の企画意図が具現化された設計プランが、そのまま商品になってしまいます。
 
そのため、営業マンはパンフレットに書かれている以上の説明はできませんし、その事業主独自の商品企画意図の説明をと言われても困る。といったところが本音ではないでしょうか。
 
鈴木 雄二
 
https://news.yahoo.co.jp/articles/ecb8738ad482c43039629c90ceffc02b3d27f9fe?page=1