新法施行で「民泊やめたってよ」 Airbnbは4万件減 中国系も撤退で不動産売り相次ぐ〈dot.〉

2018年6月15日

民泊新法が6月15日、施行された。それに伴い、世界で展開する民泊予約サイトAirbnb(エアビーアンドビー)の利用者が急激に減っているという。





 2020年の東京五輪に向け、訪日観光客の受け入れに欠かせない民泊だが、観光立国への道はふさがってしまうのだろうか。





「これで民泊は終わったと思っている」

 

東京都渋谷区で民泊を営んできた男性(28)はこう漏らす。男性は2016年から2年ほどAirbnbで民泊を運営してきたが、赤字になった月はなく、トラブルもなかったという。





「家賃・管理費含めてだいたい11万円。売り上げは少なくて15万円。多くて22万円くらいでした」





 だが、Airbnbから6月に突然、こんなメールが届いた。


 


《2018年6月15日より住宅宿泊事業法が施行されます。 同年6月1日、国土交通省観光庁観光産業課長通知が、Airbnbを含む各住宅宿泊仲介事業者に急遽一斉に発出されました。同通知によれば、届出番号、あるいはその他のホスティングをするための正当な理由(許認可等)がないホストの方は、既に確定済みの予約であってもゲストの受け入れが許されない旨が通知されています。本通知に基づき、ホストダッシュボードへの届出番号あるいはその他の許認可等の記入が今すぐ完了しない場合、2018年6月15日から2018年6月19日間にチェックイン予定の既存の予約が一律にキャンセルされます》

届け出がなければ、予約がキャンセルになるというメールだった。男性はこういう。

「今年の12月に民泊の予約がたくさん入っていたのですが…。お断りしなければならないのが残念です。新法上で民泊ビジネスをやるメリットを見失ったので、これを機にやめることにしました」





 男性によると、最も高いハードルは年間180日までという営業規制だ。





「ビジネスとしてやっていたので、180日では赤字になります。値段を上げれば、お客さんは来なくなると予想しています」





 他にも新法上、民泊を運営するにあたって物件所有者や管理組合に許可が必要なため、面倒なことが多い、敷居が高いと男性はいう。 





「民泊OKというマンションは、立地などの条件も悪く、赤字になる可能性が高い物件が多いです」





 都内で5月末まで民泊を運営していた女性(32)もやめたと明かす。





「提出する書類が多いし、消防法令に沿った準備を新たにする必要もある。煩わしいわりに、180日までしか貸せなかったりと利益が出づらいと思い、やめました」





 民泊は欧米で普及し、日本でもAirbnbが上陸した2013年以降、広がりを見せた。しかし、現行のルールが追いつかず、今回、細かいルールなどを定めた民泊新法の施行に至った。

仲介サイトは新法施行後に無許可施設を載せられない。Airbnbは6月初旬に4万件以上の表示をやめ、掲載施設は約8割にまで減った。



「手間をかけないために、Airbnbではなく、中国のサイトを使おうかと思ったけれど、以前、中国の人に家を汚されていたし、Airbnbに比べて集客力もないので、やめる決断をしました」(前出の男性)

一方、民泊を運営する中国の会社も、新法の規制が厳しいため、日本の不動産物件を相次いで手放すケースが増えているという。



 東京で中国人向けに賃貸物件や売買物件を紹介している不動産会社の担当者はこう言う。



「“民泊新法”の影響、民泊のために1部屋を購入している中国人の中にも手放す動きは出始めています。ただ、マンションを一棟買いして民泊をやっていたところは、簡易宿泊所として切り替える動きが出ています」



 大阪で民泊をしていた大連出身の中国人女性は、5月末で民泊を辞めた。大阪の私立大学を卒業後、故郷の大連には帰ったが、1年前、大阪の繁華街である難波に、民泊用に物件を3000万円で購入した。2人で1泊500人民元(約8500円)だった。



「民泊投資のために買いました。運営は業者に任せてて、普段は大連にいました。ただ、民泊新法で難しくなり、断念しました。それと、部屋の管理や宿泊客のやりとりやなどで疲れました。売ろうかとも考えましたが、とりあえずは中国人留学生向けに部屋を貸そうかと思います」



 家具を売りに出す人も後を絶たないという。

 前出の男性、女性らはこう訴える。



「”闇民泊”とか言われますが、私が運営した間はトラブルはありませんでした。ほとんどが安全に行われていると思います」



 その一方で民泊を巡るトラブルは聞こえてくる。

一番多いのは、外国人客らの夜の騒音やゴミ出しトラブルなどで他のマンション住人から苦情が相次ぐケースだ。



「女性しか泊めない物件もあり、そこでセクハラ被害にあう人もいた」(前出の男性)



 また犯罪者が民泊を悪用し、窃盗やバラバラ殺人事件の現場となったこともあった。



 民泊が推進されるにあたって、こうした被害を極力減らす対策が今回の民泊新法の目的だ。新法の施行は約1年前に決まっていたため、民泊を受け入れる側は、十分に対策を取る時間があった。しかし、「手間」という理由で、届出をしなかった人が多いのも現実だ。



 本来、国の文化やライフスタイルを体験したいということが民泊の目的なはず。規制強化によって登録物件が減った現実はあるが、登録物件の質が上がったことにより、安全性が担保され、安心して日本を楽しんでもらうことができる。新法施行以降、民泊をはじめとしたシェア経済圏がどう変遷していくのか、注目したい。(田中将介/大塚淳史)

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180615-00000001-sasahi-soci&p=1