相続時の10年以内の登記が義務化される!?「所有者不明土地」関連の法改正の行方は?

2020年5月22日

「所有者不明土地」とは、文字通り「誰が持っているのか分からない土地」のこと。今回は、「所有者不明土地」がこれから引き起こすと予想されている問題と、その解決のために行政が進めている対策について詳しく解説します。(ファイナンシャルプランナー・佐藤益弘)


【※前回の記事はこちら!】>>最近よく耳にする「所有者不明土地」とは?

 

「所有者不明土地」について今後、予想される問題とは

 わが国の人口ピラミッドを見たときの最大の多数派である団塊の世代といわれる方たちが、後期高齢者である75歳を迎えるのが2025年前後です。一般的に後期高齢者になると、痴呆症の発症や要介護になる確率が高くなり、意思表示がしづらい状況に陥りがちです。

 そして、超高齢社会が進展する中、相続も増加することが予想され、2030年前後に多死社会・大量相続時代が訪れるといわれています。
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 相続の連鎖によって「所有者不明土地」が、より大量に発生する可能性が高くなりますから、この問題の解決が喫緊の課題になっています。

 一つの「所有者不明土地」を解決するためには、所有者の探索をすることになります。そのためには多大な時間と費用が必要になります。「所有者不明土地」が大量に発生すれば、事態の深刻化が避けられそうにありません。

 

先行して改正された「土地基本法」が2020年4月1日施行に

 2020年4月、土地の利用や活用に関する指針を示した「土地基本法」が30年ぶりに改正され、「所有者不明土地」問題の解決に向けた事実上のキックオフとなりました。

 土地基本法はバブル経済真っ最中の1989年(平成元年)にできた法律でしたから、土地活用を促進することを前提に、土地所有者の“権利”が中心的に示されていました。

 それが2020年(令和2年)に改正された土地基本法では、「所有者不明土地」問題における、管理不全になっている土地を解消するために、土地所有者の”権利”だけでなく、“責務(責任と義務)”も示されることになりました。

 どういうことかというと、わが国の所有権はとても強い権利で、たとえ隣近所の土地が管理不全になって迷惑を掛けていても、所有者に無断で活用したり、立ち入ったりすることができないことになっています。

 しかし、このような土地をそのまま放置すると、近隣住民が多大な迷惑を被り、ひいてはその地域全体の資産価値を下げてしまうような状態に陥ってしまうかもしれません。

 こうした問題の解決のためには……

・所有者が土地の利用・管理について第一次的な”責務”を負う
・所有者による土地の利用・管理が困難な場合には、近隣住民や地域コミュニティ等が行う利用・管理には公益性があると考えられ、そのために所有権は制限され得る
・国や地方公共団体は、利用・管理の促進策やその法的障害の解消のための施策を講じるべきである

といったことが必要で、今回の改正に盛り込まれています。

 そうすることにより、管理不全の陥っている空き家や空き地に対応していこうとしているわけです。

 

「所有者不明土地」問題の解決に向けたこれまでの国の動き

 これまで「所有者不明土地」問題に対して、さまざまな議論が行われてきました。

 たとえば、2018年(平成30年)に「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議)が決まり、法務省や国土交通省など関係省庁で「人口減少社会における土地に関する基本制度の在り方」等について検討を進めています。

 そして、同年11月に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行されました。

 内容としては、登記名義人として記載されている所有者が死んだ後、長期間にわたって登記されていない土地があった場合、登記官が職権を用いて、亡くなった所有者の法定相続人を探した上で「長い間、相続登記未了であること」などを登記に付記して、法定相続人に登記手続きを直接促すことができるようになりました。

 ただ、「所有者不明土地」問題を解消するためには、まだまだ必要なことが山ほどあります。

 問題解決をより一層進めるため、2019年(平成31年)3月より法務省にて法制審議会-民法・不動産登記法部会が立ち上がり、議論を経て2019年12月3日に「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」として公表されました。パブリックコメントを受けて、2020年夏頃までには最終試案が出され、秋の臨時国会での法案成立を目指すことになっています。

 

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正法案のポイントは?

「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」 の中身を覗いてみましょう。

 まず、「所有者不明土地」問題の根本的な原因である「相続等による所有者不明土地」の”発生を予防”するための仕組みづくりとして、不動産登記情報の更新を図る、としています。

 具体的には「相続時の登記を義務化すること」を挙げています。

 また、「所有者不明土地」の”発生を抑制”するため、「土地所有権の放棄」や、遺産分割を10年以内に行うなど「期間制限の設定」などが検討されています。

 そして、「所有者不明土地」を”円滑かつ適正に利用”するための仕組みづくりとして、「共有関係にある『所有者不明土地』を利用できるようにする方策」が考えられています。

 具体的には、共有を解消しやすくするための、民法の共有制度の見直しです。この件は2021年度の「住生活基本計画」でも、「老朽化マンション」が主な議題に上がっていることから、改正が求められています。

 また、所有者不明土地の管理を合理化するために、現行法にはない「特定の財産のみを管理する制度」が検討されています。このほか、近隣の土地の所有者が境界の確定や確認などをする際に「所有者不明土地」を利用しやすくするためのルール改正も提言されています。
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 まとめると……

1.相続等による所有者不明土地の発生を予防するため「相続登記の義務化」を進め、不動産登記情報の更新を図る

 

2.相続等による所有者不明土地の発生を抑制するため「土地所有権の放棄」や「遺産分割の期間制限」などを設ける 

3.所有者不明土地の利用について円滑化かつ適正化を図る
・所有者不明土地の共有制度を見直す
・所有者不明土地の財産管理制度を見直す
・所有者不明土地を近隣地の住民が使えるように「相隣関係規定」を見直す 以上の事柄は、執筆時点(2020年4月)では現在進行形の話なので、変更されることも予想されます。

 なぜなら、改正される法律は、民法(物権法、相続法)及び不動産登記法など非常に多岐にわたります。また、改正されると、その後の生活に大きなインパクトを持つことになるからです。

 次回からは、「所有者不明土地」の具体的な4つのケースについて、お伝えします。

佐藤益弘

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200521-01110621-diamondf-bus_all&p=1