首都圏でも世帯減、空き家「800万超」はひたすら増え続けている

2018年8月10日

倒壊の恐れがあるなど危険な空き家を行政が強制撤去できるようにした空き家対策特別措置法の全面施行から3年が過ぎ、全国で空き家撤去に乗り出す地方自治体が増えている。7月は石川県輪島市、新潟県柏崎市などで行政の代執行があった。岩手県立大総合政策学部の倉原宗孝教授(地域環境計画論)は「周囲に大きな悪影響を及ぼすのなら、代執行もやむを得ない」とみている。その一方で、人口減少時代を迎え、空き家の数は大都市圏でも増えるばかり。大阪市生野区など官民一体で空き家対策を模索する自治体の動きも加速してきた。

●輪島市と柏崎市で行政代執行に着手



 「期日までに除却か補修を命じたが、履行されなかった。法に基づく代執行に着手する」。石川県輪島市小田屋町の空き家前で7月、市職員が代執行の宣言書を読み上げる。ドアを壊して建物内に入り、残された家財を運び出したあと、ブロック塀から順に解体が始まった。



 この空き家は木造2階建て延べ約250平方メートル。築74年の老朽家屋で2009年から居住者がいなかった。通学路の県道に面しているが、10年ほど前から瓦や外壁が崩れ、危険な状態。小田屋町の歴代区長から市へ対応を求める声が寄せられていた。



 市は市外に暮らす所有者に対し、2017年12月に指導、2018年1月に勧告、3月に命令を出し、除却か補修を求めてきた。しかし、期限の5月18日を過ぎても対応されず、代執行やむなしの結論に達した。



 要した費用は約200万円。所有者に全額請求するが、費用が支払われないときは所有者の財産を調査して差し押さえる。輪島市都市整備課は「市内に行政指導している危険な空き家が約60戸ある。所有者側で対応してもらえるよう働きかけたい」と表情を曇らせる。



 新潟県柏崎市諏訪町では7月、鉄骨鉄筋コンクリート地下1階地上3階建て延べ約1,200平方メートルの旧旅館が代執行で撤去に入った。商店街に隣接した住宅密集地にあるが、12年前から空き家になり、老朽化で倒壊の危険性が指摘されていた。



 旧旅館は60年ほど前に営業を始め、約20年前に廃業している。所有者は既に死亡し、相続人もいない。2007年の中越沖地震後、両隣の民家や通学路に外壁が落下する恐れが出たため、市が約2,300万円を投じ、落下防止ネットを設置するなどしてきた。

撤去費用は約6,300万円。外壁に健康被害が問題になっているアスベストが含まれており、飛散防止対策が必要なため、高額になった。市内にある危険な空き家は3月末時点で84戸。柏崎市建築住宅課は「来年度以降も順次、優先度の高い順に対応せざるを得ない」と頭を痛めている。



●空き家の急増で代執行も増加傾向に



 2015年に施行された空き家対策特別措置法は、周辺環境に深刻な影響を及ぼし、放置すると危険な空き家を特定空き家と規定した。自治体は同法に基づいて立ち入り調査を行い、指導、勧告、命令、代執行ができる。



 総務省住宅・土地統計調査によると、空き家は2013年10月時点で全国に820万戸に達し、5年前の前回調査に比べて63万戸増えた。総住宅数に占める割合は0.4ポイント増の13.5%。空き家数、空き家率とも過去最高を更新している。その後の5年で地方の人口減少が加速していることを考えると、現在の実数はもっと多くなっているとみられる。



 別荘などを除いた都道府県別の空き家率は、最も高いのが山梨県の17.2%、2位が愛媛県の16.9%、3位が高知県の16.8%。過疎地域を多く抱える地方が上位を占めた。

●首都圏も世帯数が減少に転じる



 愛媛県が県内20市町にアンケート調査したところ、「所有者の高齢化で撤去費用を負担できない」「空き家を撤去して土地を売却しても、撤去費用が高くつく」など空き家が既に負の資産になっている現実が浮き彫りになっている。



 これに対し、大都市圏も東京都10.9%、愛知県12.0%、大阪府14.8%と空き家が高い比率を占める。単身世帯の増加で伸びを続けてきた世帯数は、首都圏でも2020年代に減少に転じる見込み。空き家問題が地方に限った悩みでなくなろうとしているのが現実だ。



 これに伴い、特定空き家の代執行が全国で目立ってきた。国土交通、総務の両省がまとめた実施数は、2015年が1件、2016年が10件、2017年が12件だったが、2018年は7月までに輪島市、柏崎市のほか、東京都台東区、大阪市、神戸市、群馬県大泉町、茨城県ひたちなか市、三重県名張市、愛媛県四国中央市、鳥取県米子市などで実施されている。



 空き家が負の資産となっている場合、自治体がいくら代執行しても所有者から費用回収できない可能性がある。所有者不明の土地、建物も増えるばかりで、このまま空き家が増え続けると自治体の予算がいくらあっても足りない。

●大阪市生野区は官民協力で空き家活用を模索



 危険な空き家を増やさないためには、使える空き家をどんどん利用する必要がある。そのために官民を挙げた組織で対策に乗り出す自治体が、大都市圏でも出てきた。大阪市生野区がその1つで、地元住民が2年前から空き家活用プロジェクトをスタートさせ、区が支援している。



 大阪市は空き家が28万戸あり、空き家率も17.2%。ともに政令市の中で最も悪い。中でも生野区は戦災を免れ、昔ながらの下町が残ったこともあり、1980年以前に建てられた古い長屋住宅が区内の住宅総数の12.4%に達した。これが老朽化して次々に空き家となっているわけで、空き家率は22.4%と市平均を大きく上回る。





 このため、空き家活用プロジェクトでは月に1回、「空き家カフェ」と題した意見交換会を開き、空き家と入居希望者のマッチングなどに力を入れている。7月までで成約は4件。いずれも地域に長く貢献してくれそうな若い世代が入居した。



 このほか、区は空き家所有者に対し、母子家庭や海外からの留学生、実習生らを対象としたシェアハウスへの建て替えを提案している。生野区地域まちづくり課は「下町の長屋の魅力を発信し、空き家活用に結びつけたい」と力を込める。



 地方では、愛媛県が5月、20市町や大学、不動産業界などと連携し、空き家対策ネットワークを発足させた。利用可能な空き家のうち、所有者の使途が定まっていなかったり、賃貸、売却がなかなか進みそうもない場所にあったりするものについて、産官学で対策を検討する。



 愛媛県建築住宅課は「効果的な対策を推進するには連携が必要。県内の知恵を結集して取り組みたい」としている。

放置された空き家は危険を招き、周辺不動産の資産価値を落とす厄介者だが、生野区の木造長屋のように地域の歴史や文化を象徴する建物であることが多い。



 倉原教授は「活用できる空き家を地域づくりにどう生かすかが大事なポイント。空き家対策を住宅や都市整備の部局だけで検討するのではなく、自治体全体で取り組み、地域の未来を考えるきっかけにすべきだ」とアドバイスしている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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