高値がつく“富”動産は何が違う? 物件の優劣を見分けるポイント〈AERA〉

2019年4月18日

住宅を新たに買う、住み替える。これらは人生の一大イベントだ。将来大幅に下落する“負”動産ではなく、利益が出る“富”動産をつかむには──。

負動産と富動産をどう見分ければいいのか。住宅過剰社会の現状や空き家問題を実地調査してきた、東洋大学教授の野澤千絵さんによると「世代ミックス」「建物用途の混在」「街の新陳代謝力」がキーワードだという。

「古くなった部屋はリフォームできますが、街は自力ではリフォームできません。マンションの管理も自分ひとりだけではどうにもならない。『安いから』『車もあるし』と、現在ですら便利とは言い難いような立地の物件を買ってしまうと、将来、売るに売れずに苦労することになります。若い人ばかり、高齢者ばかりといった世帯構成の偏りにも注意が必要です」(野澤さん)





マンションばかりが立ち並び、建物の用途が偏在しているエリアにも注意が必要だ。

「湾岸地区などを歩くと、意外にまだ空き地が多いことに気づきます。そこに新たなマンションが建てられ、エリア内の住宅総数が積み上がっていけば、将来的に、中古住宅の売値にも影響してくるでしょう。最近はなにかと『住みたい街ランキング』に注目が集まりますが、こういったランキングの上位の街には結局、同じような年齢・世帯構成の人が集まりがちなのが気になります」(同)





 何年も続けてランクインすると買値が上がり、物件価格は割高になる。欲しくても予算に合わないと、『少し駅から遠くてもいいか』と妥協して買う人が増える。だが、同じ場所に似た世帯が集まると、将来は街全体が高齢化する。その結果、同じ街でも条件の悪い物件を買った人の手元には“貸すに貸せず、売るに売れず”の負動産だけが残るという構図である。





 理想は若い人や高齢者がともに住み、新築マンションだけでなく昔ながらの商店街や既存の戸建て住宅が共存している駅。商業施設、学校や塾、病院、幼稚園、公園などが細かく混在しているエリアはさらにいい。

国土交通省は成長戦略の一環として「みんなで進める、コンパクトなまちづくり」をスローガンに、各自治体に立地適正化計画の策定を促している。今後の少子高齢化に耐えうる街をつくるため、人口減少の中にあっても人口密度を維持するエリアとして居住誘導区域を設定し、住人をそのエリアへ誘導することを目指したものだ。




「もし住宅の新規購入、住み替えを検討しているなら、自分の買いたいエリアが立地適正化計画の居住誘導区域に指定されているか確認したり、また、今ある防災拠点や医療・福祉施設、商業施設などが将来にわたり維持される可能性が高いかどうかを吟味したりしてください。負動産を抱えてしまわないための防衛策です」(同)





 実際の「負動産」と「富動産」を見比べてみたのが表だ。





 case1は、都内人気エリアであるJR中央線・西荻窪駅が最寄りで、ほぼ同じ築19年、約56平方メートルの中古マンション2件を比べたものだ。両方とも新築時の価格は4千万円台なのに、片や負動産は930万円も値下がりし、富動産は470万円値上がりしている。

この差を生んだ最大の要因は駅からの距離だ。「負」は徒歩14分かかるのに対し、「富」は徒歩2分。便利なエリアで駅近であることは、19年経っても470万円のプラスを生み出す。また、「負」は3階、「富」は11階。階数が一概に差を生むわけではないが、上の階のほうが資産価値は高くなるのがセオリーだ。両者には2LDKと1LDKという違いもある。ただ、築年数が経って売却する際には買い主や販売会社が室内をリフォームすることが多いため、間取りの影響は低い。




 case2は、バブル期に建てられたさいたま市と東京都世田谷区経堂の中古マンションの比較だ。さいたま市のほうは大宮駅から徒歩15分、経堂は10分。築年数は約30年と同条件だが、前者は新築時より1390万円値下がりした負動産、後者は80万円値上がりした富動産に。

大きな違いは、「駅力」「街のブランド力」だ。前者の最寄りの大宮駅はJR京浜東北線埼京線など六つの路線を使える利便性により評判は悪くないが、都心回帰が進む中、埼玉の物件で駅から遠いとなるとニーズが落ちる。一方、東京23区内でしかも好イメージの世田谷区の物件は値崩れしにくいのだ。




 実際に新築マンションを日本全国に供給している不動産総合ディベロッパーは「負」と「富」の境界線をどう見ているのか。首都圏中心に「レーベン」「ネベル」ブランドの新築マンションを供給するタカラレーベン代表取締役社長の島田和一さんは言う。




「端的に言うなら、駅から徒歩何分かという分数格差。歩いて5分なのか、10分なのかという差でも、将来の価格は変わります。立地に関しては昔から言われていることですが、昨今は“1分でも近く”という風潮が強いようです。快速が止まるか止まらないか、といった駅力も負と富を分ける境界線になります」





 新たに買う場合には、「負動産にならないポイント」に気をつければいいが、自分が住んでいる家や、すでに負動産になっている実家を、富動産に変える方法はあるのだろうか。

売る前にリフォームして内装だけでも新しくすれば、富動産として売れるのでは、と考えがちだが、実は、次に新しく住む人が自由に設計変更できたほうが、売れやすいようだ。つまり「リフォームが必要な分、値段を下げて売る」ほうが、買い手がつきやすい。特に、将来負動産になるリスクがあるなら、不動産会社の仲介による売却ができるのであれば、叩き売り価格になってしまっても売ったほうがいい。仲介が無理なら、買い取り事業者に安く買い上げてもらうことも検討する。




 現在、不動産価格はバブル状態と言えるほどに上昇している。それでも、買われる物件はすぐに売れてしまう。この理由は買い手のニーズやライフスタイルの変化も関わっているという。





「共働き世帯の増加、高齢シニア層の住み替えニーズ、晩婚化によるシングル世帯の増加等。これらが『多少高くても、立地価値の高いものが売れる』要因だと思います」(前出の島田さん)





 価格が下がるのを待ってから買おうという発想は通用しない。たとえ、不動産購入時に500万円安かったとしても、将来、売却時に、1千万円、2千万円と下がってしまえば意味がない。だからこそ、不動産を選ぶときは、何年たっても買い手がつく富動産かを見極めることが大切なのだ。(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)





※AERA 2019年4月22日号より抜粋

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190417-00000023-sasahi-life&p=1