Airbnbはもう古い?「1カ月」単位の宿泊需要増で変わる民泊スタートアップ事情

2020年11月27日
増える中期滞在需要
 
 
 
欧州のレンタルプラットフォーム大手であるFlatioとNomadXが、今年10月に合併を発表した。1カ月から1年程度の中期レンタル市場に注力することで、滞在プラットフォームのトップランナーであったAirbnbと対抗していく予定だ。
 
 
 
Airbnbがこれまでサービスの中心にすえてきたのは、観光やビジネスを目的とした、数日から数週間の短期利用だった。しかし、デジタルノマドというワークスタイルの誕生や、コロナの影響によるリモートワーカーの増加も受け、中長期滞在のニーズは急成長している。FlatioとNomadXは、ここに目をつけた。
 
 
 
Airbnbやホテルは、短期滞在を前提にした価格設定となっている。そのため、数カ月単位の中長期滞在で使用したい場合は、価格が高くなってしまうというデメリットがあった。また、通常の賃貸契約を交わす場合は、最低滞在期間が1年からに設定されている住宅が多い。このため、数カ月単位の滞在希望者は、滞在先を探すのが非常に難しいという状況があった。
 
 
 
FlatioとNomadXの価格設定は1カ月単位となっており、Airbnbやホテルと比べると割安で借りることができる。また、Flatioのサービスでは、長期滞在にありがちなデポジット(日本でいう敷金)の支払いがない。テナントと大家の間で賃貸契約を結んだり、アプリを通した継続契約と支払いも可能だ。
 
 
 
 
デジタルノマドやリモートワーカーが求める中期滞在
 
 
 
数カ月単位の中期滞在は、今増えつつあるといわれる「デジタルノマド」の間で需要が高まっている滞在スタイルだ。
 
 
 
場所に縛られずに仕事ができるデジタルノマドは、住みたい場所に旅行も兼ねて自由に滞在しながら仕事ができる。サンフランシスコなど生活費の高いエリアから離れ、生活コストが低い国や地域に滞在することもできる。「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた、休暇を過ごしながら仕事をするワーケーションというスタイルも、リモートワークの増加に伴い一般化した。
 
 
 
そんなデジタルノマドにとって、Airbnbやホテルに数カ月滞在するのはコストの面から選択外だ。一方、長期滞在を前提に不動産を貸し出しているオーナーからすると、数カ月というのは短く、供給がない。Flatioの共同創始者であるRadim Rezekによると、オンラインで利用できる中期滞在サービスは、現状ほとんどないのが現実だという。
 
 
 
リモートワークが一般化しつつある今、自宅オフィスを他の場所にうつしたいという需要も、今後増えることが予想される。スウェーデン、フィンランド 、オランダでは、雇用労働者の30%以上が、現在自宅で勤務をしている。アメリカのデジタルノマドの数は、今年で1千万人になるという予想もある。気分転換に、自宅ではない場所に別荘的に住まいを持ち、仕事場として使用するという需要も、今後増えていくだろう。
 
 
 
 
デジタルノマドを対象としたサービスの増加
 
 
 
Flatioの今年度の予約数は、前年比で20%上昇した。都心だけでみると、100%の収益増加を記録している。チェコで2015年に創業したFlatioは現在、17か国・60都市に展開しており、9000件のリスティングを持っている。対するNomadXは2017年の創業時から変わらずポルトガル市場にフォーカスしており、リモートワーカーなどを対象に、1700件の物件が登録されている。どちらも、1カ月から1年までのサービスが対象で、1カ月の利用料金は、Airbnbに比べて50%も安いという。
 
 
 
Airbnbも、4年前に中長期滞在サービスを視野に入れたことがあったが、ニーズが少なかったことから本腰を入れてこなかった(中期滞在の利益は当時、全体の5%)。
 
 
 
海外でリモートワークをする場合はビザの問題もクリアしなければならないが、テック人材用のビザを発給する英国をはじめ、リモートワーク・フリーランスビザを発行する欧州の国も増えている。チェコでは、Zivnoという1年有効なフリーランス向けの滞在ビザがある。テック最新国のエストニアでも、デジタルノマド向けの滞在ビザが今年6月からスタートした。ジョージア、ドイツ、ノルウェー、ポルトガル、オランダなども、それぞれ条件や期間は異なるものの、一定期間滞在をしながらフリーランスとして働く労働者向けにビザを提供している。
 
 
 
 
Airbnbの失敗から学ぶ
 
 
 
Airbnbではこれまで、利益追求の弊害として賃貸住宅の家賃が高騰するなど、数々の弊害が議論されてきた。日本をはじめ、現在では多くの欧州の都市で、Airbnbを中心とした短期滞在サービスに対する規制が行われている。
 
 
 
FlatioとNomadXは、こうしたAirbnbによる弊害や失敗を、よく心得ているようだ。
 
 
 
Airbnbを利用する家主が、利益追求のために複数の物件を管理する傾向にあるなかで、Flatioに登録している家主の85%は、1人1件のみとなっている。「物件は1人で多くても2件まで。利益追求ではなく、あくまでもサイドビジネスとして行う家主を優先しています」とRadimは説明する。
 
 
 
また、FlatioやNomadXの使用者全体の20-25%は、その街に暮らす地元民だ。学生や家を改修中の地元民などが使用するという。
 
 
 
リモートワークへのシフトに伴い、これからさらなるデジタルノマドの増加が見込まれる現在。FlatioやNomadXに限らず、中期滞在者やデジタルノマドを対象としたサービスに、今後も期待したい。
 
 
 
文:杉田真理子 / 企画・編集:岡徳之(Livit)
 
 
 
https://news.yahoo.co.jp/articles/585a8fd3fc1064dbccb9b2cbc84ade629e8ccded?page=1