2009年1月20日 朝日新聞 掲載

“わが家のミカタ”
〜知られざる「事故物件」 家賃半額・相場の7割の売値・・・安けりゃ気にしない?〜

「事故物件」ってご存じですか。
これ、不幸にも自殺などで人が亡くなった家を指す不動産用語。
そんな家を売ったり貸したりする時は、事故の内容を相手に説明する必要があるんです。
でも、何年前のことまで知らせるかはグレーゾーン。
一方、価格の安さから事故物件を探す人もいて、入居が抽選になる賃貸物件もあるんです。(神田剛)

大阪府内の約40室のアパートでは、しばらく前に住人の自殺があった。直後から気持ち悪がった入居者の退出が続き、住人の数は半分になってしまった。

気持ちの問題は不動産取引でも無視できない。というのも、事故物件には、法的には「心理的瑕疵(かし)がある」とされているからだ。
瑕疵とは欠陥のこと。

つまり、物理的な欠陥はなくても、気持ちの上で通常の住み心地を欠く物件というわけ。所有者や仲介の不動産業者が事故のことを説明せずに結んだ売買や賃貸契約では、あとでわかってトラブルになるケースがしばしば発生。裁判でも契約の解除や代金の減額を認める理由になっている。

とはいえ、何年前の事故まで説明しなければならないのかと言うと、この線引きが、どうもあいまい。

実際、農村の土地の売主と仲介業者に、約50年魔の殺人事件も説明する必要があると賠償を命じた判決もあれば、都会のワンルームマンションであった自殺を知らせるのは4年程とした判決もあり、立地や近所の人間関係の濃淡で判断はまちまちだ。

国土交通省も「不動産業者の問合せもあるが、『何年たったら言わなくていい』とは行政としては言えない」と歯切れが悪い。

既に解体した建物であった自殺は瑕疵ナシ、解体した建物でも殺人なら瑕疵アリとした判例もある。近くに暴力団事務所があることを言わなかったのもこの瑕疵にあたる。住んでびっくりという事態を極力避けるなら、自ら周辺に聞き込みをする手もありそうだ。

さて、そんな中でも比較的ハッキリ扱いを決めているのは、77万戸の賃貸住宅を抱えるUR都市機構だ。

室内で孤独死や自殺、殺人、死者の出る火事のあった物件は「特別募集住宅」として入居を募っている。誰か入居すれば、次からは通常の物件と同じ扱いだ。
内装は、水回りなどを一新。家賃も最大で2年間半額にする。家賃10万円が半額だと2年で120万円。ま、それでも募集に苦労してるかと思いきや、実はそうでもないらしい。
何と首都圏の物件は、毎月抽選で入居者を決めている。昨年度は募集した310個に約700人が応募、全部埋まった。中には10倍という物件もあり、立地のいい物件は割引ナシでも入居者が決まるそう。
「単身の方が多いようです。入居後、気持ちが悪いといった苦情もありません」と担当者。物件の数も特に増減はないんだとか。
ちなみに東京都都市住宅供給公社では3年間家賃半額。こちらは先着順で、2年間誰かが続けて住めば、次から事故物件扱いをやめる。
事故物件を買う人もいる。ワケありの物件を多く扱う大阪の不動産会社「F・P管財」には、つきに1、2件、事故物件の売却依頼が持ち込まれる。
代表の北端秀行さん(32)によると、相場の5〜7割まで価格を下げれば買い手は見つかるとか。
安けりゃ何でもいいと言う人や、買値が安いから低い家賃でも貸せると投資用にアパートを一棟買う人も。
ただ、北端さんが売却を仲介した事故物件には、ローンを苦に、住人が自殺したとみられる家もある。
本欄でも以前紹介したとおり、ローン破綻で家が競売にかかっても、債権者に交渉して競売を取り下げてもらい、他に買い手を捜す任意売却という方法がある。
これなら競売より高く家を売れ、家賃を払って自宅に住み続けることも可能だ。北端さんは言う。
「お金の問題は解決する方法があることを、悲観する前に知って欲しい。私も事故物件を売りに来られたご遺族をみるのは、とてもつらいことなんです」

 *「心理的瑕疵」をめぐる主な判例*

通常あるべき「住み心地の良さ」を欠く物件には、瑕疵(欠陥)があるとされる。瑕疵の有無は、原因や経過した年月、周囲にどの程度知れわたっているかによっても判断が異なる

【瑕疵があるとされたケース】
■マンションを買ったら、売主の妻が約6年前に自殺していたことが後でわかった
契約の解除を認める(横浜地裁89年9月)

■買った土地にある物置で、約7年前に自殺(病気で死亡)があったと後で判明した
契約の解除を認める(東京地裁95年5月)

【殺人事件のケース】
■土地を買ったら、以前そこにあった建物で8年前に殺人事件が起きていた
売買価格の5%の賠償を売り主に命じる(大阪高裁06年12月)

■農村の土地を買ったら、約50年前、そこにあった家屋で殺人事件が起きていた
土地を売った売り主と仲介業者に賠償を命じる(東京地裁八王子支部00年8月)

【賃貸物件をめぐるケース】
■都市部のワンルームマンションを借りていた住人が自殺した
今後1年間は部屋を賃貸できず、3年間は従来の賃料で貸せなくなったとして、住人の連帯保証人らに132万円の支払いを命じる(東京地裁07年8月)

 

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